理科離れと天文教育への提案

佐 藤 和 子NAGANO教育研究会 〒399-8303長野県安曇野市穂高牧1870-6

理科離れ・低学力・活字離れなどの主な原因は都会から自然が失われ、子供達が思考力や探究心を養う場所が無くなり、核家族化・共働き家庭の増加などで幼児期の本の読み聞かせが減少、ストレス社会の影響で子供達の脳細胞が損傷を受けている可能性などが考えられる。これらの対策として子供を自然の中で遊ばせ、生き物を飼い、(財)日本宇宙少年団のような自然科集団活動への参加などがある。それらを補うものとして、企業の宣伝がしっかりと記憶に定着する点に着目して考案した図鑑を使用する学習法を提案する。図鑑の写真や図の説明を音読してビデオ撮影し、図鑑やポスターを掲示した部屋でビデオ又はビデオから取り出した音声を毎日繰り返し流すことにより記憶の定着を図る。(コマーシャル方式学習法:著作権第228414号)

1.理科離れの原因と対策

近年子供達の理科離れや低学力、活字離れなどが懸念されているが、なかなか決め手になる解決策が見つからないようである。これらの主な原因は、都会から自然が失われ、子供達が探究心や思考力を養う場所が無くなったこと、核家族化や女性の社会進出・不況の影響などによる共働き家庭の増加で母親達が忙しく、幼児期の本の読み聞かせ時間が減少している可能性があること、また、ストレス社会のため、子供達が大人からストレスの影響を受け、脳細胞に損傷を受けている可能性があることなどではないかと推察している。

私は、自分の子供達を自然の中で育てた経験および、その経験を元に考案した理科離れ対策方法を天文教育も含めて提案したいと思う。

「今時珍しい理科少年」

これは、2004年6月、大阪府貝塚市立天文台善兵衛ランド館長小林英輔博士より、私の小学生の子供達を評していただいた言葉であるが、この言葉をきっかけとして、私はもしかしたら自分達の経験が理科離れ対策に役に立つかもしれないと思い、まとめることにした。

子供達が理科少年と評されるに至った主な要因を検証した結果から、次のような理科離れ対策を提案する。

・子供達を自然の中で遊ばせよう

・生き物を飼おう

・家の中に理科環境を作ろう

・天文台、博物館、動物園、植物園、水族館に行こう

博物館友の会や、自然科学系サークル活動に参加しよう

子供を自然の中で遊ばせよう             生き物を飼おう

    

 写真1.夏は毎日昆虫採集              写真2.うちに子犬が来た

しかし、これらはある程度の条件が必要で、誰でもできるとは言い難い。そこで、私は自分の子育ての経験と反省も含めて、もっと気軽に、あまり理科に興味の無い人でもできるような、机上の勉強によらない学習法(コマーシャル方式学習法:著作権第228414号)を考案した。

これらの対策について一つずつ見て行きたいと思う。

2.子供を自然の中で遊ばせよう

私は、15年前に大阪から長野県に移り住んで以来、2004年に半年間大阪で生活していた期間以外は、ずっと北アルプスの麓の自然の中で暮らしてきた。我が家は、シラカバ、コナシ、クリ、コナラ、エゴノキ、アカマツなど様々な種類の樹木の自生する庭に、カブトムシやクワガタムシをはじめとする様々な昆虫、ニホンザルやキツネなどの動物、ウグイスやカッコウ、アカゲラ、オオルリなど数多くの野鳥などが四季折々にやってくる。そして、夜空には満天の星が輝く。子供達は生まれたときから庭や周辺の森で、夏は昆虫採集(写真1.)、冬は雪遊びなどをして自然にどっぷり漬かって成長してきた。

子供にとって自然はワンダーランドだ。子供は、自然の中で「不思議だな。」「面白いな。」

「なぜだろう?」という試行錯誤を繰り返し、思考力や探究心を養う。

都会の子供達はこの非常に重要な経験があまりできないため、理科離れや低学力などの問題が生じているのは当然の結果と言える。

今の子供は自然の中での遊び方を知らないと言われるが、それは普段自然に接していないのだからこれも当然である。大人でも慣れない場所へ突然連れて行かれたら、戸惑うはずである。

しかし、都会では子供を自然の中で遊ばせるのは現実的に非常に難しい。ではどうすればよいのか。その対策については、後ほど述べるが、子供を自然の中で遊ばせることやはり理科離れ対策の基本であることを念頭に置いていただきたい。

家の中に理科環境を作ろう           博物館に行こう

    

写真3. 図鑑などの自然科学の本と望遠鏡            写真4. 大町エネルギー博物館

2.生き物を飼おう

我が家では、犬とニワトリ3羽、金魚を飼っており、夏はこれにカブトムシ、クワガタムシ、水生昆虫などが加わる。(写真2.

生き物を飼うことの効用は言うまでも無く非常に大きいが、最も重要なことは、毎日接することで観察眼を養うことができることと共に、ストレス社会では、アニマルセラピーとしての「癒し効果」も見逃せないだろう。ストレスが子供達に及ぼしている影響についての考察を後述する。

3.家の中に理科環境を作ろう

現在、我が家では家の中に観葉植物と金魚の水槽を置き、自分で発掘した貝などの化石や鉱物などの標本、野鳥、恐竜などのフィギュアを飾っている。

 一方、私は小学校2年生のときにいとこから動植物の図鑑を見せてもらって以来図鑑が好きになり、日常は図鑑を見て、休日に自然の中へ行き、普段図鑑で見ていた動植物の本物を見つけるのが楽しみだった。現在、宇宙や動植物、地質などの図鑑や自然科学系の本を子供の手の届くところに並べている。そのうちの数冊は表紙や中が見えるようにして飾っている。(写真3.

また、天体望遠鏡、双眼鏡、顕微鏡、ルーペなどの自然観察用具、補虫網などの昆虫採集用具、根堀や胴乱などの植物採集用具、釣り道具などの自然とかかわるための道具もできればいつも目に触れる場所に置いて慣れさせることも必要だと思う。

そして、家の中の理科環境に欠かせないのが、後述する自然科学テーマのポスターである。

4.天文台、博物館、動物園、植物園、水族館に行こう

私は大阪育ちで、子供の頃はときどき大阪市立電気科学館(現大阪市立科学博物館)、大阪市立自然史博物館、太地くじら博物館、天王寺動物園、王子動物園、南紀白浜サファリパーク、天王寺植物園、神戸市高山植物園、神戸市森林植物園、海遊館、須磨水族館、串本海中公園などに行っていた。これまでに子供達を連れて行った長野県内および周辺の施設の主なものは、大町エネルギー博物館、田淵行男記念館、四賀村化石博物館、小川村天文台、松本アルプス公園、長野市茶臼山動物園、群馬サファリパークなどである。これらは遠いので、ぜひ地元に小さくてよいから総合博物館を、と機会あるごとに行政関係者に話をしている。

これらのような施設は、全国的に不況のため閉館になってしまったところや、経営が大変だとの話も耳にする。しかし、例えば大阪の海遊館などはいつ行っても混雑していて、大変人気があるようである。内容が面白ければ人は集まると思うが、あのような大規模な施設は作るのも維持するのも非常に大変である。資源を大切にする、という意味からもこれからはあまり大規模なものを作るよりも、既存のものを利用して工夫するほうがいいと思う。工夫例を後述する。

(財)日本宇宙少年団 北アルプス大町分団の活動

  

写真5. 水ロケット作り           写真6. 天体観望会「木星、土星」(丸山卓哉氏提供)

5.博物館友の会や、自然科学系サークル活動に参加しよう

自然科学系サークル活動のようなものとしては、これまでに(財)日本野鳥の会、(財)日本自然保護協会(私は、1990年から十年余り同会の自然観察指導員として、戸隠森林植物園などで自然観察ボランティア活動)松本ナチュラリストクラブなどでお世話になり、現在は子供達と一緒に(財)日本宇宙少年団北アルプス大町分団(写真5.6.)および高山蝶の写真家、田淵行男記念館むしの会でお世話になっている。むしの会は昆虫に限らず、化石の発掘などにも力を入れているので世界が広がる。

私の子供達は二人とも未就園児の頃から様々な種類の自然観察活動に参加してきたため、自然界を全体として捉えているようで、どこへ行っても違和感なく溶け込めるようである。やはり三つ子の魂百までと言われるように、どの分野でも大きくなってからいきなりなじませようとしても難しく、「子供は常に新しいことを学ぶ」1)ということで、自然の場合もできるだけ小さいうちからなじませることが大切だと思う。

これらの団体も前述の天文台と同じく宣伝方法にもう少し一般の人の感覚を取り入れたほうがいいのではないかと思う。そのためには、外部の人間の意見を聞くことも大切だろう。 

図鑑を使用したコマーシャル方式学習法の実例

   

写真7. 図鑑読み聞かせビデオ        写真8. ビデオの音声        写真9. 図鑑ディスプレイ

(写真7.9. 小学館 21世紀こども百科「宇宙館」より)

6.コマーシャル方式学習法による図鑑読み聞かせビデオの提案

冒頭でも書いたように、理科離れや学力低下、活字離れの主な原因のひとつに核家族化、共働き家庭の増加による幼児期の本の読み聞かせ時間の減少も考えられる。

私自身、共働きのため子供達にもっと本を読んでやりたくても疲れて十分読んでやれたとは言い難い。その反省も含め、「企業の宣伝はなぜしっかりと記憶に定着するのか?」という点に着目して考案したのが、コマーシャル方式学習法である。(著作権第228414号)

私達は普段日常生活の中で無意識のうちに記憶に定着させられているものが3つある。それは、身の回りの環境と、母国語の日本語、そして、母国語の習得過程を元に作られている企業の宣伝である。身の回りの環境とは、普段毎日接しているもの、例えば、自宅や学校、職場、行きつけの場所などの外観や内部の様子など、そして身の回りの人々もこれに含まれる。私達は、この身の回りの環境を通して、気づかないうちに母国語を身に付けている。

企業の宣伝が記憶の定着に効果があることは異論の余地が無いであろう。テレビCM、ラジオ、インターネット、新聞・雑誌広告、チラシ、ポスター、パンフレットなど企業は様々な方法で消費者をぐるっと取り囲み、記憶の定着を図っている。このうち、最も効果が高いのは、テレビCMであることは間違いないであろう。

誰でも自分やあるいは家族の方が知らない間にCMソングを覚えて無意識のうちに鼻歌を歌っていた、などという経験のあるのではないだろうか。

これはどういうことだろうか。私達は、あまりにも小さいときにその能力を獲得したため普段忘れてしまっているが、日本語を覚える際、主に聴覚によって言葉を聞き取り、その意味を視覚あるいは触覚、臭覚などの五感によって認識し、それを何度も何度も繰り返すことによって覚えたのである。

テレビCMでは、このうち視覚と聴覚の刺激、つまり映像と音声を何度も繰り返すことによって消費者の記憶の定着を図っている。さらに、ほとんどのCMには音楽が使われているが、音楽は記憶の定着を強化するそうである。(例:大人の英語のネイティブスピーカーでもアルファベットの順番をABCソングで覚えている人は多い。20031月元ハーバード大学アン・ダウ氏来日講演より)

                     

これらにヒントを得て、私はコマーシャル方式学習法を考案するに至った。

企業の宣伝方法は多岐に渡っているが、これは複数の媒体で同一内容を繰り返すと、単一のもので繰り返すよりもさらに相乗効果が期待できるからある。しかし、あまりたくさんの媒体を作るのは大変であるし、使いこなすのが難しくなるため、私は、これらのうち最も効果が高いと思われるもの数点に絞った。それは、テレビCMに相当するビデオ(映像+音声)、ラジオCMに相当するビデオの音声、ポスターまたは本のディスプレイである。

この方法は、全教科に応用することが可能であるが、ここでは理科教育や天文教育に重点を置いて説明を進めたいと思う。

本の題材選びに関しては、理科の場合、手軽に入手できるものとして図鑑が上げられる。現在発売されている図鑑は非常に優れたものが多く、写真や印刷技術の発達で、まるで「読む博物館」のようである。これは家族全員で楽しむことができるという点でも優れており、少子高齢化社会に於いて、世代間を越えたファミリー生涯学習テキストとして推奨したい。

天文教育では、宇宙関係の図鑑を使用する。宇宙の歴史について学習する場合、たとえば、小学館の21世紀子ども百科 宇宙館2)には、150億年の宇宙の歴史を1年にまとめた「宇宙カレンダー」および46億年の地球の歴史を1年にまとめた「地球カレンダー」が掲載されていて、最初にこれらでビデオを作ると概要がつかみやすく便利である。

理科教育全般の場合は、これに加えて動植物や地質、科学、人物、歴史(科学史を含む)などの図鑑も併用する。

ビデオの作り方であるが、できれば二人以上で作業するのが望ましい。一人が図鑑を朗読し、もう一人が撮影する。説明文を読み上げながら、同時に写真やイラストを大写しにする。できれば記憶を助けるため、BGMをかけながら作ると良い。各自の好みの曲でいいが、モーツァルトなどのクラシック音楽が脳の発達によいと言われている。複雑な音の配列の曲を毎日聴き続けていると、脳細胞の配線を複雑にするからだろう。ただ、不快感を覚える曲は記憶にとってマイナスに作用するが、慣れるに従って不快感が軽減する場合もある。最初は易しい曲から始め、徐々に難しい曲へ進むと無理が無い。このような順番で作られているものに、例えば、スズキメソードのバイオリン2)やピアノなどの練習曲CDがある。特にバイオリンは空間認識能力を高めると言われており、アインシュタインもバイオリン演奏が上手だったそうである。3

ビデオ作りの作業は骨が折れるが、一度作ってしまえば後はスイッチ一つで毎日繰り返すことができる。長さは1530分前後が適当であると思われるが、はじめは短めにして徐々に長くすると良い。年齢の低いうちは時間が取れるが、年齢が高くなるにしたがって時間が取りにくくなるので、「毎日流せる長さにする」のがポイントである。たとえ5分でもやらないよりはずっといい。(我が家では、ゲームをやっている横で流しっぱなしにしているので、このようなことが可能な場合は、長時間のものでもよい。)

毎日繰り返すことでしっかりと記憶に定着させることができる。

これは語学教育の話であるのでそのまま理科に当てはめるのは無理があるかも知れず、推測の域を出ないが、外国語習得のためには2000時間以上その言語に触れ続ける必要があるということで、極端な言い方かもしれないが、もしかすると幼児にとってみれば理科も外国語の一種のようなものかもしれない。だとすれば、2000時間というと、一日1時間なら6年、3時間なら2年で達成ということである。

ビデオを撮影したら、今度はビデオの音声をCDまたはMDやカセットテープなどに取り出す。これは家の中はもちろん、車の中でも聞くことができる。ビデオばかりかけ続けていると疲れるが、音声と交互に流せばよい。

次にポスターまたは図鑑のディスプレイであるがこれらにより、常に記憶したい内容を意識することができ、記憶の補強に役立つ。図鑑をカラーコピーして目に付く場所に掲示するかまたは、私は図鑑そのものを次のような方法でディスプレイしている。A3クリアケースファイルに図鑑の見たいページを開いて入れ、ミニイーゼルに乗せて子供がいつもいる場所の近くの棚の上に置いている。

筆者の子供達の場合、ここまで見てきたような総合的な理科の環境で育った成果が徐々に現れ始めている。上の子は、小学校5年生の夏休みに豊科郷土資料館で行われた「化石は語る」展において、発掘した小さな貝の化石が展示された。また、小学校の宿題の書初めで「地球環境」と書き、初夢の中で宇宙に関する30問の質問をされたそうだが、全部答えられたそうだ。小学校の国語の時間に「地球を守れ!」という物語を書き、授業でインターネットを使って調べ学習をした際、クラスメートから「どうしてそんなに宇宙のことを知っているの?」と不思議がられ、冒頭にも上げたように、大阪貝塚市立天文台善兵衛ランド見学の際、館長小林英輔博士から、「今時珍しい理科少年」と評していただいた。

都会では子供を自然の中で遊ばせるのは簡単なことではないし、集合住宅では生き物を飼うにしても制約が多い。自然科学の本や道具を揃えたり、自然科学系集団活動や自然観察会に参加したりするのはある程度自然に興味を持っている人が大半で、それ以外の人は難しい。

そこで、上記のような図鑑活用法で補うことを提案する。幼稚園、保育園、小学校、中学校などで休み時間に上記のような図鑑の読み聞かせビデオまたは音声を流す。教室や廊下に図鑑や図鑑をコピーしたポスターを掲示する。

このような図鑑学習は、確実に多くの子供達に効果をもたらすだろうと予想される。

例えば、学力の低い子供達や理科離れの子供達を集め、一日1時間前後、図鑑をディスプレイした部屋でビデオや音声を流し、その中である程度自由に過ごさせ、(大声で騒いではいけないが)必要に応じて親しみやすく穏やかな感じの教師が話し相手や助言をしてやることができれば、時間はかかっても徐々に子供達に変化が見られると予想される。恐らく、半年、1年と経つうちに少しずつ落ち着きが出て、授業中の態度がしっかりしたものになってくるだろう。

低学力の子供達の多くが家庭問題を抱えており、寂しい思いをし、話し相手を求めている。学力向上のために授業時間を増やしている学校もあるようだが、これで成績が向上するのは元々ある程度成績の良い子供達で、本当に対策を必要としている低学力の子供の大半は何らかの苦しみを抱え疲れており、この子供達の場合は締め付けを厳しくするのは逆効果になりかねない。温かく和やかな雰囲気の中で、徐々に力を付けてやることが望まれる。これと並行して、各家庭にビデオ、CDポスターなどを配り、家庭でも実行してもらえばさらに効果的だろう。

そして、この学習法は不登校の生徒にも有効であると確信している。

7.ストレスの影響

冒頭でも触れたように、ストレスが脳細胞にダメージを与えるということで、高田明和浜松医科大学名誉教授によれば、ストレスが脳細胞を破壊し、ボケるそうである。5)今後ストレス社会がどうなって行くのかが非常に懸念される。

詳細はまた別の機会に述べるが、これは私にも非常に思い当たる節がある。いじめによるストレスで成績が急激に下がり、さらに脳の機能が低下して長期間部分的記憶喪失にまでなっていた。しかし、これらも前記学習法の実践によって克服し、不十分な面も多々あるが、それでもこのような文章を書けるまでに回復したのである。脳の機能が低下してぼんやりテレビばかり見ていたときには思いもよらなかったことである。

ストレスに関して、本年76日付の信濃毎日新聞に非常に気になる記事があった。

ワーキングマザー支援会社マザーネット社長の上田理恵子氏によると、同社会員の働くお母さん達のストレスについてのアンケートで、ストレスがたまったときの症状第一位は、「子供に当り散らす、怒る」(全回答者約150名のうち、約3割)というのだ。データが少ないので確かなことは言えないが、今日の日本がストレス社会であることは誰の目にも明らかであり、かなりの子供達が親から当り散らされていることが予想され、子供達がストレスで脳細胞を減らしている可能性が懸念される。

このことに関して早急に研究が進むことが望まれることと同時に、教育関係機関は、ぜひ親御さんたちに「子供に当り散らすと脳細胞が減って学力が低下しますよ。」と警告していただきたい。

8.学校の理想の形と市民のための天文台

次に学校の理想の形についての提案である。

人間は、周りの環境に染まる。例えば、遊技場で生活し続ければ知性とは程遠くなり、博物館で生活し続ければ次第に知性が染み込んでくる。それも年齢が低い人ほど染まりやすい。天文台、博物館、図書館、動物園、植物園、美術館などを組み合わせた施設の中に、保育所、幼稚園、小・中・高等学校、大学の教養部などを作り、(必ずしも一貫校という意味ではなく、それらのうちのどれか一つの教育機関でもよい。例:総合博物館の中にある幼稚園など。)その中で子供達を長時間過ごさせることができれば、理科離れや低学力も防止・改善できるのではないか。

(これらの施設にしっかり触れさせることが大切である。現状のように図書館はあっても学校の隅に追いやられているような状況ではあまり効果は期待できない。これらの施設を学校の中心に据え、その中にどっぶり漬かることで効果を得られる。)

これは何も目新しいものではなく、古代エジプトのアレキサンドリア図書館がそれらのようなさまざまな種類の研究施設を備えており、多くの才能が開花していた。6)我々はもっと先人の知恵に学ぶべきではないか?現在の子供達の理科離れや低学力は、子供達を取り巻く状況が知的でないことを表しているに過ぎないとも言えるだろう。子供達の周りの環境を豊かにすることをなおざりにして、やみくもに授業時間を増やし、知識の詰め込みに戻っても一時しのぎにしか過ぎず、長い目で見て決して良い結果は得られないだろう。

一番問題になるのが費用だと思うが、アメリカでは例えばメトロポリタン美術館などは、議会で建設が決定された時点では資金ゼロで、市民に寄付を呼びかけて作られたそうだ。本当に必要なもの、本当に素晴らしい計画であれば、啓蒙活動を続けることにより、いつかはわが国でも市民の理解・協力を得ることも、可能になるかもしれない。この啓蒙活動にもコマーシャル方式学習法の応用が可能である。

学校教育だけではなく、いうまでもなく市民教育も大切である。子供の理科離れは、周りの大人の影響も大きい。

都会では自然を取り戻すのは難しいが、このような時代にこそ、「街中に市民のための天文台を」と願わずにはいられない。私は、天文のことはあまり詳しくないが、生まれて初めて大口径の望遠鏡で太陽を見せてもらったときの感激が忘れられない。どのような都会でも太陽、月、いくつかの明るい星が見えない場所は無いはずである。ぜひ多くの人に宇宙の感激を味わっていただき、図鑑学習も併用して地球の素晴らしさ、人類が誕生してきたことの素晴らしさ、そして自分や周りの素晴らしさに気づいて行って欲しいと思う。市民のための天文台は、身近な行きやすい場所に存在していることが重要である。

残念ながら近年私の住んでいる信州でも天文台の廃館も耳にするが、天文台が廃館になってしまう理由として、天文関係者は奥ゆかしい人が多く、宣伝が苦手なのではないか?と思う。ある程度一般の人の感覚を取り入れた宣伝も必要だろう。例えば、真っ赤に燃える太陽面の写真を大きく引き伸ばして大型看板を作り、「こんな太陽、望遠鏡で見て見ませんか?」というような簡単な言葉を添え、天文台の入り口付近に設置するなどしてみてはどうだろう?今は機械が発達しているので、低料金でもできる方法があるはずである。例えば、数枚に分けて印刷したものをラミネート加工して張り合わせるなど。

新聞やミニコミ誌もどんどん活用するべきである。

 子供達が本物の教養を身に付けることを願ってやまない。

9.自分と周りの素晴らしさに気づく早道

私は、自分の経験から、自分や周りの素晴らしさに気づく一番の早道は、私達の身体の構成元素の形成過程の概要をできるだけ単純化した形で伝えることだと思っている。ここでも伝える方法として、コマーシャル方式学習法を使うことができる。今の天文学はあまりに多岐に渡り過ぎて一般の人にはどこが重要なのか分かりにくいようである。天文関係者には「常識」でも、一般人にとってもそうであるとは限らない。できる限り枝葉をそぎ落とし、下記のような人間の身体の形成過程に関する宇宙の歴史のエッセンスを抽出して、まず一番に伝えていくことが、根本的な理科離れ対策だと考える。

ビッグバン→第一世代の星(誕生から超新星爆発に至る過程)→第二世代の星(誕生から超新星爆発に至る過程)→第三世代の星、太陽系の誕生7)、生命の進化の概略8)。(すべての生物の身体も、太陽系のすべてのものも、星の破片でできているということが分かるように伝える。)

これを伝える上で最も重要なことは、分かりやすく美しい図を使用し、なるべく単純化することと、「人間の身体も星の爆発によって生まれた素晴らしい物質でできていること」を強調することであると思われる。

これらのことについて、国立天文台4次元デジタルプロジェクトチームで製作されているような科学的かつ芸術的なムービーや図を使って平易な言葉で幼児期から折に触れて繰り返し伝えて行くことが理科離れを防止する根本であると考える。(幼児・児童対象の場合、たとえば、第一世代の星はおじいさん星・おばあさん星、第二世代の星はお父さん星・お母さん星などの言葉を使用する。)

そして、それは単に理科離れ防止のみならず、自分や周りを大切にすることにもつながっていくと期待できる。ただ、これまでは科学者達にとって一般人の感覚がつかみにくく、万人向けの伝え方がよく分からなかったのだと思う。上記の宇宙の歴史の人間にとってのエッセンスを一番に伝えた

上で、地球や宇宙の様々な自然の詳細、たとえば、生態系の概要や、宇宙の全体的な歴史や構造などに入っていくことが重要であろう。それらを伝える場合も、まず概要から入り、徐々に詳細へ移るべきではないだろうか。そうしないと、今は細分化された各項目の詳細から入る場合が主流のように感じられ、いつまでたっても全体像をつかめない、あるいは全体像をつかむ前にほとんどの人が脱落又は挫折している場合が多いように見受けられる。そのことが、自分の素晴らしさに気づきにくくし、自分や他者、ものを大切にしない風潮や、あるいは暴力へとつながり、平和な社会にもつながっていかない主要原因なのではないか。

話を元に戻すと、もし、先述の国立天文台のムービーを数分の映像にまとめたものをNHKテレビなどでコマーシャルのように毎日スポット的に流し続けることができれば、徐々に国民全体の意識の向上にもつながっていくだろう。

そして、もしもこれを世界中で毎日流すことができれば、平和な社会へ向かって潮流が変わって行くのではないだろうか。

参考文献

1)ワールドファミリー編 2001, 今日から始める英語環境づくり(星雲社)

2)監修 渡辺潤一 小畠郁生 諏訪元 的川泰宣 渡辺勝巳, 2001,21世紀こども百科 宇宙館 (小学館)

3)鈴木鎮一, 1955, 鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集 (全音楽譜出版社)

4)鈴木鎮一 愛に生きる(講談社)

5)高田明和, 2004, ストレスから自分を守る脳のメカニズム(角川書店)

6)セーガン C. (木村繁 ),1980, COSMOS (朝日新聞社)

7)チャウン M.(糸川洋 ),2000, 僕らは星のかけら 原子を作った魔法の炉を探して(無名舎)

8) 和田純夫, 2004, 宇宙創成から人類誕生までの自然史(ベレ出版)


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